希望こそが会社の原動力
会社の毎月の経営状況を簡易的に分析するPythonプログラムを自分で完成させた。短時間でどの部分に問題があるのかを、的確に分析できるようになってきた。
あとは、それを社員にどう理解してもらうかだ。大切なことは、分かった「病巣」を取り除く方法と、健康を回復させる道筋を示すこと。希望が持てるような、今後のプランを示すことだ。
年度計画と中期計画もPythonで作成するようにした。数値はcsvで、テキスト部分は、txtファイルで読み込ませる。月次計画と共に、シミュレーションが即座にできるようにして、AIの力も借りながら、定性的な分析も行えるようにした。余談だけど、コマンドラインからキントーン(kintone)やGemini(ジェミニ)を使えるようになってから、資料作成の幅がまた一段と広がった気がしている。
製造業から商社へと業種転換する
いままでヒロボーは70年以上も製造業に徹していた。しかし5年前に策定した第3次中期経営改革で、僕たちは商社として生まれ変わることを目標とした。過去の栄光を振り返らないで、時代の変化に合わせ、やり方を変えていくことにした。
不可能と決めつけていた2材成形やインサート成形についても、どんどん社外へ出していこう。僕たちが売るべきは「付加価値」なのだ。そしてそれは工場を持たなくても、必ず生み出すことができると僕は信じている。
亡くなった父は僕によく言っていた。次は「ソフト」の会社にしていけと。ヒロボーは紡績から始まって、プラスチック製造業へ転換した。父はそれをさらに転換していくことを考えていたらしい。
人と人とを結びつける「ソフトな」会社
「ソフト」の会社というのは、いわゆるコンピュータのソフトウェアを生み出す会社のことだと、僕はずっと思ってきた。でも、それはそういう狭義のソフトのことではなくて、付加価値を生み出す会社のことだと、今は思っている。
よく、2材成形やインサート成形などの高度な製造技術を外注へ出せば、技術が漏洩し、競争力を失ってしまうのではないかと指摘される。技術だけを売る会社なら、それは致命傷だろう。でも僕たちは製品を売っている。大切なことは良い商品を「届ける」ことなのに、どうして自らが技術を持つことにこだわる必要があるのだろう。
自分たちが持っていない技術はどんどん活用すればいいし、生産に協力してくれる会社にない技術が自社にあれば、どんどん相手に提供すればいいと僕は思っている。
僕の思う「ソフトな」会社とは、人と人とを結びつける会社だ。その間の商材は、何でもいい。最初はいままで扱ってきたプラスチック製品かもしれないが、今後はどんどん別の商材も増えていくと思う。
大切なことはヒロボーが扱っている商品が、それを手にして喜んでくれる人を増やすことだ。それが社会をよりよくしていく原動力となって、社会全体が、昨日よりも今日、今日よりも明日が良くなっていく。それが、結局は自社の繁栄、そしてまわりまわって、個々の幸せにつながっていくのではないだろうか。
遍路は社会、社会は遍路
自分たちだけの狭い世界に閉じこもって利益を追求しているようでは、会社は本当の意味での繁栄はしないし、成長もしない。それは歩き遍路でいうところの、「お接待」は回すものという考え方に通じていると僕は思う。
歩き遍路では、見知らぬ人から「お接待」と称して親切にしてもらったり、様々なものをもらったり、はたまた宿を提供してもらったりする。しかし、彼らはそのお遍路さんに何らかの見返りを期待しているのではない。「遍路」という一つのシステムの中で、もっと言うと「社会」という大きなシステムの中で、お遍路さんに接待をすることで、社会がより良いものになっていくと彼らは信じている。
だから、お遍路は「社会をより良くしよう」という一種の運動だし、信仰だと僕は思う。それは決して経済的にという限られた意味ではなくて、社会全体の幸福を目指している。
会社も本来はこうでなければいけないと僕は思う。企業の事業活動は、よりよい社会を築くためのものでなければ、いずれは破綻してしまう。
過去は捨てていこう
「言うは易《やす》く、行うは難《かた》し」で、実際に商社に転換するのは、大変なことだ。でも、僕たちは、どうすれば相手が喜んでくれるのか、そして、どうやってそれを生み出せば良いのかというプロセスを、もう知っている。あとは、今までの「製造業」という成功体験を捨てて、もっと大きな枠組みの中へ自分たちを放り込んでいけるかどうか、それが成功の鍵だと僕は思っている。
人は、どうしても過去の成功にこだわってしまう。それは会社でも同じだ。誰しもが、いままでうまくいった方法をとった方が楽だと思う。でも、それではいつまでたっても社会は良くならないし、自分たちも成長しない。社会が良くならなければ、会社の繁栄も一時のもので終わってしまうだろう。
持続可能な社会をつくるために
歩き遍路が1200年以上も続いているのは、決して偶然ではないと思っている。そのシステムはこれからの持続可能な社会を創る上で、重要なヒントを与えてくれているのではなかろうか。
僕は、会社のこれからのあり方と遍路とが、意外なところで一致する部分があることに、少し驚いている。ずっと探し求めていた世界が、もうすぐそこまで来ているような、そんな気がしてワクワクしている。
「つくる会社」から「価値を生み出す会社」へ。この10月から始まる第4次中期経営計画において、勇気を持ってその一歩を踏み出していきたいと思う。まずはその最初の一年で、赤字事業からの撤退を進め、利益率を向上することで、会社の基盤を安定させていきたい。すでに、いくつかの商材で、外注化が進展し、利益率が改善されている。これをこれからも積極的に推進していこう。
